「クールなことをホットに!」・・・学部時代の恩師である奥島孝康先生(現白鷗大学学長)がよくおっしゃっていた言葉だ。バンカラと言われた往年の早稲田の気風をそのまま体現したような先生の眼には、90年代に青春時代を過ごした私たちは、どこか斜に構えて熱くなれない“今どきの若者”に映ったのだろう。20年の時を経て、奇しくも私は先生と同じ職を得たが、一生懸命ゼミに打ち込む有吉ゼミ生を横目に見ながら「何、そんなに熱くなっちゃってるの?」と嘯く学生の多いことが嘆かわしい。社会人はしばしば「学生らしさ」という言葉を口にする。それはなぜなのだろうか。世間に毒され、いつの間にかどこかに置き忘れてしまった “ひたむきさ”を、学生ならば持っているに違いないという彼らの幻想に過ぎないのかもしれない。 しかし、たとえ“無い物強請り”と言われようとも、これからもそのような「ホットに」議論できる学生を発掘し、ゼミで鍛えてゆきたいものである。
実は件の奥島先生の言葉には続きがある。「ホットなことをクールに!」・・・。一見すると前段の言葉と矛盾するように思われるかもしれないが、物事の本質を見つめることの大切さを見事に言い表した至言だと思う。ゼミのケーススタディで筋の良いマーケティング戦略を立案するためには、ウェブ上に転がっている表面的なデータに左右されず、消費者の深層心理や対象となる企業の本質に鋭く迫らなければならない。ゼミ生たちは3年間の学びの中で自然と「クールに」考える癖が身についているはずである。
卒業後に歩む人生の道は必ずしも平坦とは限らない。しかし、ゼミで学んだホットに議論できるひたむきさと物事の本質を見誤らないクールさを忘れなければ、壁にぶつかっても心折れることなく、また茨の道であっても足をとられることなく、己の道を切り開けるだろう。社会での活躍を期待している。卒業おめでとう!!
平成28年3月吉日
有吉秀樹