第3期生卒業に際して

第3期生卒業に際して(2010年3月14日)

昨年末より3年間にわたって放映予定のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」が話題となっている。開化期を迎えていた明治の日本を舞台に、伊予松山の3人の若者が人生をひたむきに歩む様を、坂の上の青い空と白い雲を目指して真っ直ぐに駆け上がってゆく姿と重ね合わせた司馬遼太郎の労作である。当時の日本では、富国強兵、殖産興業の旗印の下、欧米列強に追いつけ追い越せとばかりに、官民問わず成長へのエネルギーが充満していた。ドラマの登場人物たちも寝食を惜しんで学問を競い合い、こぞって諸外国に留学しては良きところを貪欲に取り入れんとしている。たとえ、“サル真似”と揶揄されようとも意に介さずに・・・。
明治期、高度経済成長期といった激動の時代には、素直にそして貪欲に学び、やがてはサル真似を超えて自分のものとするといったことが自然に行われていた。しかし、飽食の現代、いつしか成長への意欲は薄れ、俗に言う「草食男子」なるものが世を席巻している。本学に入学してくる学生諸君も決して例外ではない。大学教育を掌る身として、組織や社会に新たなイノベーションを引き起こし、混沌の時代に方向性を示せるようなリーダーを育成することが責務であると感じている。そのため、昨春「No Change, No End~変わろうという意志こそが成長への原動力」というゼミ理念を制定し、ゼミ生たちの成長意欲を鼓舞してきた。今や卒業したOBから入ゼミしたばかりの1年生に至るまで、ゼミ理念は深く浸透しており、日々のゼミ活動のみならず、就職活動やインターンシップ、ゼミ募集など学内外の様々な局面で有吉ゼミの姿勢が高く評価されている。
第3期生はこのような有吉ゼミの骨格形成の過渡期にあたる学年と言えよう。「楽しそう」「役に立ちそう」といったイメージ先行で人気に火がついたものの、成長というゼミ理念とベクトルを合わせることができず、多くの者がゼミを去った。しかし、その結果、より筋肉質なものとなったゼミは、成長の時計をさらに速めて、後輩たちへと受け継がれている。
岩崎祐也君はゼミ理念の創設を提唱した一人であり、後輩たちに成長することの楽しさと厳しさを訴え続けてくれた。中川拓也君は、勉強面や就職活動において後輩の指導に熱意を注ぐことで、さらに自分自身も成長し続けた。2人の成長の源泉には、先生や先輩、同期だけでなく、後輩からも良いところがあれば取り入れるという貪欲でかつ真摯な姿勢を持ち合わせていたことがあるだろう。ゼミという環境を離れても、社会というフィールドで自分をどのように成長させてゆくかという姿勢を忘れないで欲しい。卒業おめでとう!!

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